MATHOM-HOUSE presented by いもたこ

気になったことを色々と。ジャンルも色々。

いざゆけ若鷹

半年ぶりの更新になる。

空白期間ができてしまった理由は、転職とかをしていたからなのだが、なんとか私も社会人という戦列に復帰した。

 

さて。

今年、ソフトバンクホークス川崎宗則選手が帰ってきた。彼の話は以前もしたような気がするが、実は私より家族が彼の大ファンで、それまで野球なんて興味がなかったというのに、5月あたりから突然毎試合ソフトバンク*1を観始めた。

そして今日、ソフトバンク日本シリーズへの切符を手にした。

ご存知の方もいると思うが、今日クライマックスシリーズを制したソフトバンクに、今のところ川崎選手の姿はない。恐らく来季にはまた元気な姿を見せてくれると信じているが、私としては川崎選手が一軍登録を外れた段階で家族はてっきり野球を観るのをやめると思っていただけに、今日まで全試合を追いかけたのは意外だった。どうも家族は、約半年間追いかけているうちに、今宮選手とか、岩嵜選手とか、他の選手にも興味がわいたらしい。

「家族は」なんて言ってしまったあたりでお分かりのように、実は私のソフトバンク熱は、家族程のものではない。だが今日、思うことがあった。上林誠知選手のことである。

 

もともと川崎選手を追いかけて試合を観始めた我が家にとって、51というのは神聖な数字だ。家族が川崎選手のファンになったのも、あの渡米する際の記者会見が原因だった。男が男に惚れて海を渡るというのだから、確かに大した話である。

そんな"聖なる数字"、51番を背負う上林選手を最初に観たときの家族の印象は、はっきり言ってかなり悪かったようだ。確かに、川崎選手みたいなタイプのファンなのだから、彼のような、一見いかにも感情の薄そうな現代っ子を好きになるはずがない。今でこそこんなことを言っているが、私としても、正直なところあまり良い印象は持っていなかったかもしれない。しいて言えば、私と彼は年がかなり近い。私のほうがいささか年上だが、ほぼ同世代なので、そういう意味では、「こういう奴、いるよな」といったタイプの親近感は沸いていた。

 

そんな上林選手も、今季を通して大きく成長したように見える。

印象に残っているのはオールスターゲームの時の笑顔だが、内面では本当に色々なことがあったに違いない。今年は彼にとって大躍進の年だったし、そうでなくても、彼や私のような20代前半というのは、思春期程ではないにせよ、かなり多感な時期なのだから。

 

そんな彼が今日の試合後に見せた涙を観て、同じ20代として、思わずはっとしてしまった。

 

涙の理由はおそらく、日本シリーズへの進出が決まって嬉しいからではないだろう。今日、彼は登録を抹消されている。それに嬉し涙だったら、ああいう泣き方はしないという泣き方だったのだ。彼はおそらく――悔しいのだろう。

若いとはいえ、大の男が悔しいから泣くなんて、そうあることではない。どうも家族としては、何ら興味の惹かれる光景ではなかったらしいが、一緒にテレビを見ていて、私はふと、我が身を振り返っていた。

 

そういえば私は、最近涙が出る程悔しいと思ったことはあっただろうか?

 

悔しいというのは、不当に扱われたと思っているか、あるいは自分に可能性があると信じているから起きる感情だ。そしてこの場合、該当するのは後者だろう。

ああいう悔し涙を流せるのは、現状に満足せず、かつ目標に向かって一生懸命取り組んだ人だけだ。

自分には成長の伸びしろ、あるいは無限の可能性があって、でもそれを100%開花できていないもどかしさ。努力が実らなかった時の、あの胸の底が焼けるような気持ち。そんな感情を、ここ最近私は味わっていないのではないだろうか。

 

そう考えて思い出したのは、中学時代のある光景である。

私は弱小合唱部のパートリーダーだった。常に部員不足に悩まされていたのだが、それでも一生懸命練習して、3年の時は、例年であれば予選落ちしているあるコンクールの本選に進出した。結果は本選敗退だったのだが、ここ3年で最も良い成績だったので、晴れやかな気分で引退できた――はずだった。

コンクールの会場であるホールを出ると、同じく本選敗退という結果に終わった別の学校の生徒が大泣きをしていた。彼らは常連校で、普段であればさらに先へ進むこともあるような、雲の上の合唱団である。それが、こんな結果に終わってしまって、悔しかったのだろう。

本選進出という名誉だけで大満足で、その先のことなど一切考えなかった我々と、あくまでそれは通過点という気分だった(であろう)彼ら。結局は同じ結果に終わったのだが、こんなにも差があるのかと、よりによって引退するその日に思い知らされた。

 

悔し涙を流す人は、きっと志が高い。

私はここ最近、本気で何かを望んで、そのために一生懸命努力したりしただろうか? ソフトバンクホークスという常勝集団に所属し、かつオールスターゲームに選ばれる程の実力あるプロ野球選手と、こんなどうしようもない一介の会社員を比較するのがそもそも間違っているが、私も上林選手も、平成生まれの、そして同じ20代の若者であることに変わりはない。

自分の人生はこんなものだと見切りをつけるには、まだ若すぎるのではないだろうか。

 

だからと言って別に私は、突然今の仕事を辞めたりする気はない。せっかくこのご時世に転職できたのだ。現状維持というのも、聞こえは悪いがとても大切なことである。

だがほんの少しだけ、上を目指してみることを思い出さなくてはならないような気がする。与えられた環境で、私は悔し涙を流せるような、強烈な努力をしなくてはいけない。

 

来年、きっと上林選手はもっと躍進するだろう。

昔ながらの人は、ああして人前で泣くような男は信用できないかもしれないが、涙するほどの強い感情があるのだ。彼はきっと、来年もっと成長するものと信じている。

そういうわけで私も、負けていられないなと思った次第である。

*1:偶然我が家は以前からCS放送と契約していたのも、野球を観るという環境ができる要因だった。