MATHOM-HOUSE presented by いもたこ

気になったことを色々と。ジャンルも色々。

マイブームはニッポニカ

よく趣味で歴史書を読むのだが、困ったことにあまり知識がないので、しばしば前提知識からして不安になる。

一般に、日本史のリファレンスとしては吉川弘文館国史大辞典が用いられることが多い。私も学生時代にはお世話になったのだが、学者でもないのにあれを家に置くのは難しいし、勿論我が家にもない。

そうなると、図書館で本を読むという話になるが、困ったことに近所に、国史大辞典やそれに類する規模の歴史辞書を置く図書館がない。かといって遠出するのは金銭的負担がかかるし、やる気を損ねるという話にもなる。

私の電子辞書にも定番中の定番であるブリタニカやマイペディア、吉川弘文館の日本史小辞典などは入っているが、しばしばその範疇を超えた語も出てきてしまっているのである。

かくなる上は、お手軽で知られるWikipediaというのもひとつの候補にはなる……が、その信憑性については言うまでもない。ちなみにジャパンナレッジはお金がないのでまだ導入していない。

 

そんなある日、偶然知らない単語を調べていたところ、コトバンク日本大百科全書(通称ニッポニカ)が引っ掛かった。

ニッポニカは小学館の大百科で、ジャパンナレッジにも収録されているのだが、10万語以上を収録し、買うと25万円にもなる*1。これが無料で使えるというのだから恐ろしい話である。1994年に完成しているので、最新の学説を追うという意味では苦しい点もあるかもしれないが、それを言ったら国史大辞典はもっと古い。

 

このニッポニカの素晴らしいところは、国史大辞典と同じように、項目毎の執筆者名が入っているのである。

例えば関東管領だった上杉憲実の項目は田辺久子氏が担当しているのだが、氏は人物叢書で『上杉憲実』を執筆した研究者であり、(正直日本史学以外はもっと詳しくないので何とも言えないが)適切な人選がされていると分かる。というか、そう信じたい。

 

最近私は、巷で大ブームになっている(?)呉座勇一氏の『応仁の乱』(中公新書、2016年)を読んでいるのだが、春日社白衣神人=国民(p. 9)という説明で早速、「国民」という語が引っ掛かり、調べてみたところ、

国民(日本史)

本来は国衙領の農民の意味であり、また中世期には住民のうち、とくに上層自営民をもさした。しかし、これらが南北朝時代から、さらに力を養うと、支配側の勢力に反抗する者として現れてくる。大和国奈良県)においては平安朝以来、興福寺が大和一円の領国化を図り、国内の有力名主を配下とし、春日社、興福寺末社・末寺を掌握して、彼らをその神主や住持とすることによって、勢力拡大を図ったが、これらの人々を国民とよび、一時代前からおもに北方大和にあって荘官・荘司の身分で法体となった衆徒と対称せられるに至った。(後略) [平井良朋]

という項目を発見した*2

 

個人的にはやはり国史大辞典にあたるなり、別の歴史書や論文を読むべきだろうとは思うのだが、まあ便利なものを見つけたものである。

*1:日本大百科全書 | ジャパンナレッジ

日本大百科全書(ニッポニカ)収録キーワード一覧 - コトバンク

*2:つまり、『応仁の乱』の時代には確かに白衣神人=国民という理解で間違いないが、前提条件として古代から「国民」はおり、むしろ「国民」が神主などにされた結果、白衣神人=国民という理解になった、ということが分かった。